CDいろいろ Feed

2011年1月10日 (月)

キダ・タローのほんまにすべて

Cdcover_kida02_2このディスク、少し前に発売されていたのは知っていたのですが、果たして買おうかどうしようかと少々悩んでいた3枚組であります。



関西地区の方なら当然ご存じの「浪花のモーツァルト」、キダ・タロー氏の生誕80年を記念して発売されたこのディスク、特に昭和を過ごした方には余りに懐かしい、「かに道楽」その他のCMソングや番組主題歌群(名曲「日本海みそ」のおかげで、富山にいたときは日本海みそ指名買いでしたし)、そして立川談志も名曲と絶賛しているらしい「ふるさとのはなしをしよう」を初めとする一般の作品群と、数千曲と言われる氏の作品数からすればごく一部なのではありますが、それでもこれだけの数の音がよく出てきてくれたものだと思うディスクなのであります。



Cdcover_kida01_2 しかし、コアなファンの方なら当然ご承知でしょうが、これには1992年に発売された旧盤というのがありまして、当時「浪花のモーツァルト」の通称が「ナイトスクープ」発で有名になってきた頃、それでもこんなディスクがホンマに企画されるんか?というディスクが出ていたのでありました。これは洋画サントラの日本盤を中心に手がけていた今はなきサウンドトラック・リスナーズ・コミュニケーションズという会社からSLCS-5002~03という番号で発売されていた2枚組で、会社自体が1997年に解散消滅してしまったために当然廃盤(中古では定価より高い価格がつくらしい)なのですが、新盤は内容的にはそれにかなり重なるもの(まあ音源はそれなりに限定されますから)。ですので、私も旧盤をかつて所有していましたが、それが事情で紛失したままになっていなかったら、買い直したかどうかはちょっと微妙なところでありました。



とは言え、旧盤とは内容に入れ替え(主に社歌、校歌、市歌など、再録するのはあまり適当ではないと思われるものを外し、新たにいくつかを加えている)、追加(NHKの主題歌関係は今回新しく入ったもの、その他若干の新発見)、そして旧盤以降に製作された作品が収録されています。具体的には、旧盤からDisc1の28~42と43、Disc2の44(最後の2トラックはキダ氏の一言)がカットされ、新盤にはDisc1の13,20,22,25,26,28,29,32,35,36,38~43(14は今回初収録の別ヴァージョン)、Disc2の29~31と39、Disc3の2,4,6,7,13~19(19は「キダ・タロー・シンフォニー」というメドレー作品のライヴ)が新規に収められています。



特にCM関連では、「アサヒペン」(今でも使われているメロディー)の音源が新たに発見されたとか、今はなき「小山ゆうえんち」(桜金造ですね)もキダ・タロー作曲だったとは知らなかった(関西地区では聴けませんでしたしね)、とか、有馬兵衛向陽閣って本当は3番まであった?とか、結構小ネタ的に捨てがたい曲や情報が入っていますし、また今回新たに収められたものの中には、幻の2008年大阪五輪招致関連ソングなんていうこっ恥ずかしいものも入っており、資料的にも面白いですね。最後の方には先代おけいはんも出てきますし。基本的にビッグバンド系ジャズ出身の人ですので、特に主題歌関連ではちゃんとしたバンドでしっかり演奏されている曲が多いです。



ともかく、旧盤を所有されている方が無理に買う必要があるのか、というとそういう気はしませんけど(でも多分重ねて購入している人は結構いると思う)、この名前と作品に多少なりとも関心のある方には、市場に出回っている間に是非購入するだけの値打ちが... あるかな?




(参照ディスク)(上のみ)
「浪花のモーツァルト キダ・タローのほんまにすべて」
(収録作品、演奏者は省略)

Rice Music: PKCP-2064~6 (1963~2009年録音)





http://blog.livedoor.jp/nktk46/archives/51811588.html

2011年1月 1日 (土)

○○年の人

というわけで、毎年ネタを繰って、生誕没後○○年の作曲家、指揮者などを取り上げるエントリを年初に打っております。毎回(その1)と書いて始めるものの、結局(その2)以降がない状態が続いておりますので、もう最初から1回きりのつもりでと。



で今年は、2年続きの記念の年になって業界的にもまだ引っ張れそうなマーラーの他は、リストやトーマの生誕200年、N.ロータ、B.ハーマン、ペッテション、ホヴァネス、それにメノッティの生誕100年、グレインジャーの没後50年当たり。指揮者ではビーチャム、ターリッヒ、マルコの没後50年あたりが目立ったところかと。



で、今回のエントリでは、あまり多くの人は採り上げそうにないメノッティを。



Cdcover_64852rg メノッティというと、クリスマス時期に出てくる「アマールと夜の訪問者」(1951年にNBCテレビ向けに発表された1幕のオペラ。当時のキャストにより1952年初めに録音されたディスクもある)のほか、さらに若い時代の「アメリア舞踏会へ行く」や、「領事」など、米国で上演されたオペラで(ある程度は)よく知られています(まあそのほか、サミュエル・バーバーや、←このディスクでも指揮を務めていたトーマス・シッパーズとの関係でもよく知られたりしていたようですが)。



名前の通りイタリア出身で、父親の死とともに母と米国に渡った人ですが、作風にはイタリア系20世紀的音楽な部分も多少は感じさせつつ、やはり米国保守派の感覚にも合致した作風であって、彼が相当の人気を保ち得たのも理解できるところです。



Cdcover_7122 もう一つ有名な作品で、私も時々聞くのが、「電話」(または三角関係)という25分ほどの小さなオペラブッファ。登場人物2人と室内オケのための作品で、題材は電話でもコクトーによるプーランクの「人の声」のような悲劇ではなく、男女の室内劇でもバーンスタインの「タヒチ島事件」のような夫婦のすれ違いを描いたものでもなく、結婚を申し込もうとして彼女の部屋にやってきた彼が電話に邪魔されてプロポーズできず、時間がないので部屋を出て外から電話でプロポーズする(で、離れている間は毎日電話する約束を)、という軽い風刺劇(と言う感覚も今の我々にもあまり強くないかも知れない)。まあ、電話もダイヤルを回す音と昔のベルの音がぴったり合う時代の作品ですね。



↑このディスクは、メノッティが若い頃学んだミラノのミュージシャン(米国出身者を含む)によってクレモナで録音されたもの。やはりこのオペラには「深刻にならないそこそこの軽さ」というのが必要だと思うのですが、この録音には、そういう面がかなり上手く出ているように思われます。




その他にはピアノ曲と歌曲がワンセットずつ。この形ではちょっと手に入りにくいかも知れませんが。






(参照ディスク)
(上) メノッティ: アマールと夜の訪問者
アレン(BoyS)、クールマン(MS)、マッキンリー(T)、エイケン(Br)、リシュナー(Br)、モナキーノ(Br) シッパーズ指揮 
RCA: 6485-2-RG (1952年録音)



(下) メノッティ: 電話(または三角関係)、リチェルカーレとトッカータ、はるかなる歌
バンクス(S)、リッチ(Br)、コンスタンツォ(P)、ヴァリエーリ指揮 ミラノ室内管
NUOVA ERA: 7122 (1992年録音)






2010年11月 7日 (日)

ドラティのチャイコフスキー交響曲全集

Cdcover_4756261チャイコフスキーの交響曲全集、といえば、以前にエントリしたロストロポーヴィチ盤 以来、ということになりますが、こちらも古くから名盤の誉れ高き録音です。以前から全集で手に入れようとは思っていたのですが、1枚あたり500円弱と、中古で安く落ちていたので購入です。



以前マルケヴィチの録音をご紹介したこともありましたが、こちらもロンドン響との録音。ちょうどピエール・モントゥーが最晩年に首席指揮者に就いたころ、という時期である60年代初頭の演奏が主体です。当時低迷していたと言われるLSOですが、この録音を聴けばそんなことは微塵も感じさせません。ドラティの力量もあってのことでしょうが、アンサンブルはカッチリと硬質、しかし抒情に欠けるわけではなく、繊細な表情も過不足なく表現しています。



上記ロストロポーヴィチ盤とは比較すべくもないほどテンポも録音の空気感も全く違いますが、こちらはマーキュリーのかなりダイレクトに音像を掴んだ録音によく合った、引き締まった感じの強い演奏です。第1番からテンポはかなり速く、しかし第2楽章クライマックス後の弱音は思いの外しっとりと、そして第3楽章は意外なほど遅いテンポ、終楽章もコーダまでかなりインテンポでこらえている印象のある演奏、しかし曲の高揚感、ロシア民謡旋律の雰囲気を損なっているわけでは決してなく、打楽器のバランスも非常によく計算されています。



あまり世間の評判にならないようですが、第2番、第3番はともに活気のある部分をビシッと鳴らし切る爽快な演奏です。特に第2番は疾走感を十二分に捉えた録音とともに大変な名演だと思います。どちらも速めのテンポでサクサクと、というところがありますのでチャイコフスキー好きの方でも好みは若干分かれるかも知れませんが、この辺りの曲を余りねっとりやってしまうのもどうかと思いますし。機能的に優れたオケで程良い太さの爽快感ある演奏、というのは非常に良いのではないかと。



後半の3曲も傾向は同様で、どれも録音の素晴らしさを感じつつ、快速で中腰のあるチャイコフスキーを味わうことができます。4番の後半などは非常に高揚感があって聞き物ですし、「悲愴」の終楽章はこういう演奏だから納得がいく、という、情感のバランスが適切に保たれた演奏と言えます。



ドラティのMercury録音といえば「1812年」が有名ですが、こちらには収録されていません。しかしアレンスキーの珍しい作品のほか、「ロメオとジュリエット」や、ミネアポリス管との「フランチェスカ・ダ・リミニ」、「スラヴ行進曲」、「エウゲニ・オネーギン」のワルツとポロネーズ、等の作品も収録され、特に「フランチェスカ」は速めのテンポでカッチリまとめる特性が活かされた佳品です。



それにしても、録音から約50年を経ているとは思えないほど新鮮な音ですね。




(参照ディスク)
チャイコフスキー:交響曲第1番~第6番、フランチェスカ・ダ・リミニ、スラヴ行進曲、「エウゲニ・オネーギン」よりワルツとポロネーズ、ロメオとジュリエット、アレンスキー:チャイコフスキーの主題による変奏曲、ボロディン:「イーゴリ公」序曲
ドラティ指揮 ロンドン響、ミネアポリス管
Mercury: 4756261 (1958~65年録音)








2010年10月16日 (土)

エリック・エリクソンの6枚組

帰ってきております。帰ってくると大阪もさすがにだいぶ秋らしい雰囲気になり、うちの前をだんじりが練り歩き、小さな庭で隆盛状態だった青じそがちょっと見ない間に花盛りになって、というわけで。まあエントリの残りはあるんですが、また後日という時期未定のストックになるのか?ちょっと捨て置くにはもったいないネタもあるのですが。



Cdcover_qiag50055_60 さて、今回お送りいたしますのは、合唱関係者ならきっと必ず知っている(?)、エリック・エリクソンの名を恐らく日本で最初に知らしめたEMI録音。もともと70年前後に、手兵のストックホルムの合唱団のすばらしい技術を駆使して、当時としてはあきらかに一つ以上レヴェルの違う名曲の名演を生み出していたわけです。



しかしこのディスク、6枚分全てが国内版で一般発売されたことはなかったようでありまして、古くは20世紀ものを中心とした3枚組LP、あるいはセラフィムレーベルでの1枚もの(私はこっちを持っている)あたりしか通常のレコード屋には流通していなかった(通販での発売のみだったらしい)ため、このほぼ40年前に録音された合唱音楽界の至宝とも言うべきディスクが、日本盤として全体として一般に入手できるというのはこれが初の機会なんだそうですね。6枚組たっぷり収録ですが、1枚あたり1000円、というのは多少微妙な気も。しかしそう大量に出る商品とも思われませんし、価格的にはやむを得ない線なんでしょうね。



それにしても内容の幅広さと演奏の素晴らしさは、多少古さを感じさせる録音ですが、その辺はどうでもいいや、と思わせるものがあります。レーガー、R.シュトラウスあたりが少々厚めに収録されているのは独Electrola録音であることもあったのでしょうか(バルトークのハンガリー民謡がドイツ語歌唱になっているのもその関係?これは非常に整った演奏で模範的なんですが、雰囲気的にはHungarotonのバルトーク全集盤の方にやっぱり行ってしまいます)。しかし今でもなかなかこのクオリティを越える演奏がなかなかないと思われるドビュッシーやラヴェル、プーランク(Figure humaineの最後のハイEが音楽的な絶叫になっているところまで含めて凄い演奏だ)、ペトラッシ、ピツェッティ、ダラピッコラ、マルタン、ジョリヴェ、メシアン等々、20世紀の音楽だけでなんと豪華なラインアップなのでしょう。そのどれもが、非常に格調高く(確かに、今の時代に聴ける演奏には、もっと軽い線でこれらの「かつての近現代音楽」を流してしまうものが多いし、タリスやモンテヴェルディなどとなると、演奏スタイルとしていささか古さを感じることも否めない訳ですが)、隅々まで手の抜かれたところがない密度の濃さ。正確な技術。欧州の合唱音楽の流れを(両端に偏っているところはなくもないですが)これ以上の形でまとめた録音はなかなかありません。



ここに納められた作品の、全てにおいてこの演奏が最高であるとまでは言いませんが、やはり合唱に関わる者にとってみれば、この録音を外して合唱音楽を語ることはできない、とさえ思えるのであります。などと書きつつ、私も合唱に関わりだした頃である25年ほど前、ドビュッシーその他をLPで初めて聴いて、かんどうというか、人間の声の威力にただただ驚いたことを思い起こすのであります。




(参照ディスク)
THE HISTORY OF EUROPEAN CHORAL MUSIC
(内容については、こちら を参照して下さい)
エリクソン指揮 ストックホルム室内合唱団、ストックホルム放送合唱団
TOWER RECORDS/EMI: QIAG50055-60  (1968~75年録音)





2010年8月 8日 (日)

ロスバウトのマーラー第7番(2種)

まあこれだけCD蒐集をしていますと、マーラーの7番という、かつてはこの作曲家の交響曲中不人気No.1の地位を恣にしていた曲のディスクであっても随分と貯まってくるものでありまして、ざっと並べてみますと、



シェルヘンバーンスタイン/NYPクレンペラーノイマン /ゲヴァントハウス、ホーレンシュタイン、クーベリック(2種:DG、auditeライヴ)、テンシュテット(2種、フィラデルフィア、ロンドンフィルBBC盤)、コンドラーシン、スヴェトラーノフ、ラトル、ギーレン (ライヴで聴いた時の話もここに書いた)、それにシノーポリ、



と言う具合に、我ながら微妙にメインストリームをかすっているような外しているような、というリストになっておりますが、要するにミッドプライス以下か中古盤しか買っていないから、というのは結構丸わかりですかね。この曲を初めて聴いたのが高校時代のNHK-FM(ベルティーニ/ケルンだったと記憶している。凄く図体のデカイ演奏、という印象があるのだがテープはどこへ行ったやら)、そのあと、当時はとても安かったクーベリックの分売LP(それでも当時2枚組3000円もした)で聴いて、特にこの曲では独特のハイトーンがつり上がってトランペットがペチャッとした音でやたら目立つ録音に少々面食らったりしたものでしたが。



で、そんな20数年前のことをふと思い出すさなかに手許に入ってきたのが、50年以上前のロスバウト指揮による録音2種類。どちらも中古。2セット合わせて1470円。安く手に入るようになったものです。



Cdcover_cdx25520 2種類あるロスバウトの録音は1952年、「ベルリン放送響」とのVOX盤と、南西ドイツ放送響との1957年盤(手持ちはWERGO)。そもそもこの年代にこんな曲を録音していること自体が驚異的なんですが、それを2度も、しかもどちらもスタジオ録音、というところがもはやあり得ないという気がします。



で、それはなんでや?ということになるわけですが、VOX盤を聴いて、そのあとWERGO盤を聴けば何となくその気持ちは分かるような。



52年盤を演奏しているのは、ディスクの表記ではSymphony Orchestra of Radio Berlin。ベルリン放送響というとこの時期では恐らく東ベルリンのオケになる(フリッチャイのファンならご存じでしょうが、52年当時は西ベルリンの放送オケはRIASの名を冠していました)んですが、米VOXがそんなオケを使えたのか?というのは誰しもが思う疑問でありまして、ひょっとすると録音用の臨時編成?という気もするのですが、しかしそんなオケでこの大曲を?というのもホンマかいな、と思われますし。



恐らくフリッチャイのオケだとしてもマーラーの演奏経験はそれほどなかったとは思われますが、それにしてもこの演奏、オケが上手くない。ロスバウトの指揮はよくドライだ感情を排しただ、と言われますが、テンポはかなり唐突な感じがするほど動きます。第1楽章は序奏の終わりで急加速して主部に入るとカクンとペースダウンしたりとか、第2楽章の冒頭だけがあり得ないほど速かったり、結構意外な動き方をするのですが、そこにきちんとついていない。第3楽章の有名なピツィカートも2回目は見事にズレる。トランペットはしばしばどこかへ行ってしまうし、録音もやや粗め。何だか奥の方で響きすぎて輪郭がぼやけ気味になるのも良くないですね。ただこの年代にこれだけの録音が残っていることに意味を見出せないわけではないですし、3楽章以降の雰囲気とかは結構頑張っているんですけどね。むしろこの2枚組はクレンペラーの超快速、たった51分で終わってしまうブルックナー4番の方が面白いですね。




Cdcover_wer6406_2 一方のWERGO盤は57年に手兵と自らの名を冠したスタジオでの録音。いかにもロスバウトの音、と言う感じの乾燥したデッドな響き。その中でオケはかなり機能的に良く鳴ります。アンサンブルの精度もかなり良くなり、基本的にテンポの揺れは大きく変わらない(全体の演奏時間は4分ほど短くなっている)ですが、そこにかなりちゃんとつけているのはやはり相手の差と言えるでしょう。録音的には年代並み、それもあって必ずしも精細、という所までは行かない気がするのは事実ですが、これはモノラル録音時代、いわゆる生誕100年マーラールネサンス直前という録音時期を考えれば、相当に優れた演奏と言えるのでは。



マーラーの7番をどういう曲と捉えるのか、というのはいろいろな聴き手を悩ませてきたわけですが、この演奏の終楽章の鳴り方などを聴いていると、「第8番の器楽による序奏」という面がかなり感じられて興味深いです。実際のところ、7番、8番、そして大地の歌と、主要主題の形は極めてよく似ていて、それを器楽の祝典的な音で鳴らすのか、さらにばかでかいスケールで「宇宙の鳴動」のように響かせるのか、人生の寂寥のどん底感を表すのか、随分極端に違った音楽に表現してしまえるものだと思ってしまうわけですが。



ほぼ同じ年代に録音されている「大地の歌」 (これはオケは同じだがVOX盤)とつなげて聴くと、またその一連の流れが意識されます。何しろ録音は50年代。ロスバウト恐るべし、というところでしょう。




(参照ディスク)
(上)マーラー:交響曲第7番、ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」
ロスバウト指揮 ラジオベルリン響、クレンペラー指揮 ウィーン響
VOX: CDX2 5520 (1952、51年録音)



(下)マーラー:交響曲第7番
ロスバウト指揮 南西ドイツ放送響
WERGO: WER6406-2 (1957年録音)







2010年7月10日 (土)

マータ/ダラスsoの6枚組

かつてダラスにしばらくいたことがあって云々、という話は当ブログの結構初期(旅行写真をいろいろと載せていた頃)から書いていたいたと思いますし、[NFLモード]もそんなこんなでDAL中心でずーっとやってきている訳でありますが、そう言えばDallas Symphonyのネタってほとんどやっていなかったような気がしますね。



私が現地にいたのはもう15年ほど前になりますので、このオケの音楽監督はアンドリュー・リットンに変わって間もない頃でした(今はズヴェーデンになっていますね)。その前の1977~93年の間、このオケの音楽監督を務め、翌シーズンには桂冠指揮者の肩書きを受けたエドゥアルド・マータは、95年に航空機事故で亡くなってしまい、彼の指揮で聴くことはできなかったのであります。



かつてドラティ、クレツキ、それに一瞬ですがショルティも音楽監督を務めていたこのオケですが、70年代には低迷していたようでして、その状況を一気に引き上げ、メジャーオケの次ぐらいのレヴェルには高めた功労者がこのマータと言われています。彼の在任中にコンサートの入場者は大きく増え、やがてはダウンタウンにMorton H. Meyerson Symphony Center(それまでは、コットンボウルの側にある、お世辞にも音響は良くないFair Park Music Hallを使っていた)を建てさせるぐらいに実力を高めたわけでして、営業面の功績も著しいのですね。



このホール、何度も何度も通わせていただきましたが、割に落ち着いた音で、まだ私の行っていた頃は内外装も新品に近いきれいなホールでした。何しろオケの定期は基本的に会員のみでSold Outなので、それ以外の人は当日の午後に事務所に電話してキャンセルリリースを確認し(まあ大抵若干のチケットはあるものです)、ホールで受け取るというパターンでした(その後会員になりましたがシーズン途中で帰国したので残りは人に譲った)。カウボーイスタイルの「正装」で訪れる人も結構いる、いかにもテキサス、という感じのホールでした。



Cdcover_dsl92109 で、←こちらのディスク。そのホールでマータが指揮してDORIANレーベルに録音していたディスクをボックスにまとめたものです。マータはメキシコシティ出身で、例えばチャベスの交響曲全集(VoxBox)みたいな普通はあんまりやらんやろ、という録音も残していたりしますが、同郷のバティスのような「超爆演系」とは一線を画し、中南米系の音楽も多く採り上げつつ、丁寧で洗練された解釈を聴かせる指揮者という評価が強かったようです。



と言いながら、ここに収録されているのは「爆演向き」の曲が多かったりするんですが(オーディオファイル系レーベル、という影響もあるんでしょう)、それでも確かに1枚目最初の「スキタイ組曲」から、良く鳴るけれど決してやかましくならず、丁寧に音を響かせている、という印象です。「春の祭典」も結構良い距離感があって、うるささを感じることなく楽しめます。その他、ショスタコーヴィチなんかもありますが、結構良いのがショーソンの「ぞうさん交響曲」とイベールを収めた5枚目のディスク。フランスの香り、っていう雰囲気ではないですが、この辺の曲はくどくならずに、明快に清々しく流してくれるのが非常に好ましい気がします。



録音は多少低域強め、という気もしますが、悪くないです。1枚当たり500円ぐらいで買えます。特にダラスに思い入れのない方にもお薦めしたいディスクです。




(参照ディスク)
プロコフィエフ:スキタイ組曲、ストラヴィンスキー:春の祭典、ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」、プロコフィエフ:カンタータ「アレクサンドル・ネフスキー」、ショスタコーヴィチ・交響曲第9番、バーンスタイン:波止場、ハリス:交響曲第3番、コープランド:ビリー・ザ・キッド、ショーソン:交響曲、イベール:寄港地、ディヴェルティスマン、レスピーギ:ローマの祭、ブラジルの印象、ローマの松
マータ指揮 ダラス響、同合唱団、パウノヴァ(A)
DORIAN: DSL-92109 (1991~93年録音)








2010年5月 3日 (月)

アンチェルのマーラー第9番

昨日(5月2日)のN響アワーはマーラーのシリーズ第2回。前回、ビシュコフ指揮の第5番に続いて、今回はブロムシュテット指揮の第9番と、どうもマーラー指揮者の本筋とは少々違うような気がしてならない如何にもN響的な流れで進んでおりますが、まあそれはそういうオケなんだから仕方がないとして。



その第9番、別に放送延長してくれてもいいんですがまあそういうわけにもいかずに第1、4楽章のみの放送で、その第1楽章、私のような古いマーラー演奏からいろいろと愛好している者にとっては、「もっと粘りを...」と思ってしまうようなサクサク進む演奏で、冒頭のハープの動機が結構他の楽器で素っ気ない感じで出てきたり、最大のゲバルトも暴力的と言うよりはずっときれいに鳴ったり、第4楽章はN響とは思えないほど純粋に音楽的に美しかったり、何だか「マーラーにどっぷり浸かる」という演奏からは非常に遠いかのように思いながら、いい演奏であるのは否定できない、という感じがしたのでありました、しかし。



かつて、この曲は「大地の歌」とともに、死を意識したマーラーによる、最終的な諦観に向かっての大交響曲、という解説がなされていたように思われるのですが、この放送で西村朗氏もブロムシュテット氏も同様に語っていたように、そのような作品なら「大地の歌」と同工異曲を並べる必要はなかったわけで、ここではむしろ前向きに(決して長くはないだろうとは思われる)自分の残りの人生を燃焼し、そして穏やかな死を望む、そういう意味合いでの積極的な音楽であるという考え方で演奏されているようですし、私もこの曲はそういった曲だと思っています。でなければ「大地の歌」の動機を大いに下敷きにしながら、最後にEwigの2度下降を最高音に止揚させる形で「解決」させる音楽を第1楽章の終わりにはしなかったでありましょうし。



作曲家とて人間、どこかで自分に「折り合い」をつける必要が生じるときはあって、それが作品の形で現れたという一面を持つのがこの曲であったり、ショスタコーヴィチの5番だったりとか言うふうに思ったりするのですが、それはまあまた別途違う盤をネタにするときに詳しく書くことにして、でも、こういう考え方で行くならば、如何にもユダヤ系ねっとり演奏も一つの形であると同時に、音楽的に(少なくとも表面的には)サクッと持っていくパターンにもそれなりの理屈はあるのだな、と特に最近は思うのであります。



そんなわけで、もう少し若い頃に聞いていたらはっきり違った感想を抱いたかも知れないブロムシュテット指揮の演奏、(真ん中は聴いていないが)なかなか良かったんじゃないのか、と最終的には思いつつ、




そう言えば、よく似た雰囲気のを聴いた気がする。




Cdcover_su36932011 と思って取り出したのがこちらのアンチェル盤。特に冒頭から提示部の終わりあたりまでは非常によく似ていて、あっけないほどさらっとした導入から少しずつテンポを落として進んでいく音楽の流れは、ブロムシュテットが参考にしたのではないかと思うほどです(昨年ブロムシュテットがチェコフィルを振って来日した際のインタビューで、チェコフィルゆかりで印象に残る指揮者としてターリッヒとアンチェルの名前を挙げていたのを読んだことがある)。アンチェルもユダヤ系指揮者だったわけですが、音楽の造りとしてはずっと新しいところを見ていたのではないでしょうか。彼岸よりも現実に対して前を向いた姿勢、しかし必要以上の悲壮感は表に出さず、あとは曲にきちんと語らせています。アンチェルのマーラーは正規の録音としてはこれとあとは1番しか残っていませんが、それ以外の曲もいい状態で残されていたらと惜しまれる所です。



過去にこの時代のチェコフィルの録音を何度か採り上げた際のコメントと同様、オケの状態は当時が最高に近く、キュッとタイトなアンサンブルながら深みのある音、両Vnとホルンの美しさは特にこの演奏の価値を高めています。日本盤では1番とのセットで出ていますね。改めて見直されるべきディスクでありましょう。




(参照ディスク)
マーラー:交響曲第9番
アンチェル指揮 チェコフィル
SUPRAPHON: SU3693-2011 (1966年録音)





2010年1月 1日 (金)

○○年の作曲家(その1)

というわけで、昨年はお正月に1回やったきりでその後放置するに至った「○○年」シリーズでありますが、今年もまずは1回行っておきましょう。



今年はこうした周年関係が豊富な年でありまして、ざっと知られた作曲家を並べましても、



生誕300年  ペルゴレージ、アーン(英)
生誕250年  ケルビーニ
生誕200年  ショパン、シューマン、ブルグミュラー
生誕150年  マーラー、ヴォルフ、マクダウェル、アルベニス、パデレフスキ
生誕100年  バーバー、W.シューマン


ついでに指揮者の生誕100年がマルティノン、ケンペあたりですね。



で、当たり前のところから行っても仕方ないので(どう仕方ないんや)とりあえず生誕100年の方をさらに斜め方向から。あとは気が向いたときにでも、と言いつつ、放っておいても採り上げそうな人もいますが。



Cdcover_dca939 バーバーと言えば20世紀のいわゆる「新ロマン主義」の作曲家と言われ、一般的には「弦楽のためのアダージョ」がダントツに知られているわけですが、まあそれ以外にも各ジャンルになかなか魅力的な曲が多く、それらが最近は演奏も録音も増えてきたのはありがたい限りです。さてその「アダージョ」はもともと若い頃に作曲された「弦楽四重奏曲第1番」の第2楽章を編曲したもの、というのもまあよく知られているところだと思いますが、さらにそのアダージョは作曲者自身によって混声合唱用に編曲され、Agnus Deiの歌詞を当てた作品になっています。これが想像されるとおりむっちゃ難しいのですが。



このディスクには、その他、Reincarnationsなど、バーバーの主要な合唱曲が12曲収められているほか、余白にはW.シューマンのPerceptions、Mail Order Madrigalsという隠れた佳曲が収められているという、まさに本エントリのために用意されたような内容になっています。演奏は、個人的にはGraingerのChandos盤なんかでよく聴いたThe Joyful Company of Singers。安定感のあるいいアンサンブルです。



ウィリアム・シューマンは交響曲8曲の他、かなりの数の作品を残した作曲家なのですが、日本では余り注目されることがありませんね。バーバーほど取っつきがよろしくない、というのは否めないところで、本ディスクに収められた作品だけ聴けば、やっぱり「バーバーの方がええかな?」という気もしては来ますが、こういう機会にもうちょっと採り上げられはしないかな、と。




(参照ディスク)
バーバー:Twelfth Night、To Be Sung on the Water、Reincarnations、Agnus Dei、Heaven-Haven、Sure on This Shining Night、The Monk and His Cat、The Virgin Martyrs、Let Down the Bars、O Death、God's Grandeur、 W.シューマン:Perceptions、Mail-Order Madrigals
ブロードベント指揮 ザ・ジョイフル・カンパニー・オブ・シンガーズ、ソーンダース(P)
ASV: DCA939 (1995年録音)







2009年12月31日 (木)

2009年最終のエントリです

2009年の大晦日は朝から強風と寒さで大変でしたね。大阪では雪はありませんでしたが、日本海側だけでなく幅広く雪も降ったようで、皆さま安全な年末を過ごすことができましたでしょうか。



Cdcover_tkc321 さて、大晦日のテレビでは別の局でポール・ポッツとスーザン・ボイルというBritain's Got Talent系の2人が微妙に時間をずらして出てきて、「ギャップで売る」というのはやっぱりこういうことね、というパフォーマンスだったりしたわけですが、それはともかく、年末ですのでベタですが「第九」を一つ。



こちらはフルトヴェングラー/ベルリンフィルの戦中録音の中でも「メロディアの第九」として名高い1942年の旧フィルハーモニーでの録音。当時録音技術としては最先端を行っていたドイツのマグネトフォン録音。これを終戦後にソ連が接収し、長い沈黙を経て、のちにメロディヤからLPとしてリリースされたものです。このディスクはOTAKENの板起こし盤ですが、もともとの音のクオリティがレンジ、奥行きとも非常に高く、時代を感じさせないほど安心して聴くことのできる音です。



音楽は戦後のフルトヴェングラーの録音よりもより緊迫感というか、烈しさと明確さが際だっています。しかし全曲を通じて「歌」が片時も失われることがなく、そしてまたブルーノ・キッテル合唱団が非常に上手い(この合唱団の40周年記念演奏会だったそうです)。フルトヴェングラー→第九→バイロイト、というラインしかご存じない方には是非聴いていただきたい録音。ディスクはOTAKENだけではなくいろいろなレーベルから出ています。





2009年はこれが最終のエントリとなります。といいつつ新年はほとんど境目なく始まるのではありますが、どうぞ皆さま良いお年をお迎え下さい。



(参照ディスク)
ベートーヴェン:交響曲第9番
ブリーム(S)、ヘンゲン(A)、アンダース(T)、ヴァツケ(Br)、フルトヴェングラー指揮 ベルリンフィル、ブルーノ・キッテル合唱団
OTAKEN:TKC321 (1942年録音)





2009年7月12日 (日)

クレツキ/チェコフィルのベートーヴェン交響曲全集

CDプロパーのエントリは最近あんまりやってませんが(というか、「今日聴いていたCD」もあんまりやってませんが)、聴いているものはたくさんあって、そのうちの一つが今回のネタです。



パウル・クレツキ、名前の通りポーランド人で、ダラスsoやスイス・ロマンドの地位にいたこともある人ですが、録音には余り恵まれず云々、と以前、「大地の歌」を採り上げたこちらのエントリ に書いたことがありました。しかしこちらにこういう名録音があったというのはあとで認識しまして、しかも全集の一部が最近まで入手できていなかったもので、なかなかエントリにできずかなり時間が経過してしまったわけであります。



現在は日本盤5枚組でも発売されていて、恐らく「通向けの全集」という感じで扱われてそんなに売れるもんじゃないやろな、という雰囲気はするのでありますが、これは「今の時代に聴くべきベートーヴェン」ではないかと思うわけでして。



Kletzkibeethoven

当方で購入しておりましたのが、Supraphonの2枚組シリーズ、Waltyのワゴンコーナーに時折入っていて、123と456は結構前に入手していたのですが、789がなかなか見つからず、上記日本盤に手を出そうかと思ったことも一度ならずございましたが、このたびようやく発見、即買いと相成りました。時間はかかりましたが全部で3千円台です。



この全集は、60年代中頃の演奏、そして40年以上経った現時点でもチェコフィル唯一のスタジオ録音によるベートーヴェン全集として知られているもの。この時代のチェコフィルと言えばアンチェルとの黄金時代。チェコフィルの「チェコフィルらしい音」が最も充実していたと思われる時代に、何故アンチェルがこの録音を行わなかったのかはよくわかりませんが(アンチェルのチェコフィルとのスタジオ録音は1,5番のモノラル録音ぐらいではなかったか)、一方でアンチェルが磨いたオケを、クレツキがどう操っていたのかは興味深いところでした。



その演奏はある程度想定できたとおり、全般にカッチリとした、太さはあるが重くはないもの。チェコフィルのしっとりした弦の響きはここでもさすがで、さらに軽やかな木管の音色がややバランス的には大きめに響き、ブラスは少々抑え気味、ティンパニは響きを抑制しつつ大事なところはバシッと鳴らす。どこかオリジナル楽器系の見通しの良い演奏を聴くような気がするのですが、いろいろな楽器の音がスムーズに聞こえ、しかもアンサンブルの統一はきっちり保たれているのが見事です。特に3枚目までのディスクは、これらの交響曲がハイドンの先に位置していることを自然に認識させてくれます。「英雄」終楽章ラスト前の木管の重なるニュアンスの深さなどは特筆ものです。



テンポは大体の所でやや速め。そして基本的にインテンポでスパッといくのかと思っていると急激にドライヴをかましたりと変化を楽しんでいる所も結構あって、例えば第7番のラストなど、上行、下行する楽器の音がものすごくクリアに聞こえてうんうんと思っていたら最後の最後に超爆発となったりとかは一例に過ぎません。聴くたびに発見があります。



どの曲も(2つの序曲を含めて)クレツキの個性がよく生きた名演奏と言えますが、もう一つ挙げておきたいのは「第九」の合唱の素晴らしさです。相当名の知れた演奏であっても、合唱そのものに難があったり、録音のバランスがおかしかったりと言うディスクは結構あるものなんですが、このディスクにおけるチェコフィル合唱団は、縦の線はきっちりしながらフレーズ感を失わないたっぷりした歌いぶりが徹底されています。有名な歓喜の主題のトゥッティから二重フーガに至る辺りはもう「何で今までこの演奏を知らんかったんやぁー」と心の叫びをあげておりました。「第九」の合唱に関わる一般の方は是非この演奏をリファレンス盤としていただきたい、と個人的には思います。



上に書きましたが40年以上前の演奏です。しかし録音の鮮度は十分で、それほど古さを感じることはありません。むしろ締まった雰囲気の演奏と合わせて、意外と新しい感じのするディスクではないでしょうか。とにかく数多くの全集がショップに並んでいて、その中でも地味な印象なのは間違いありませんが、「隠れた名盤」のままで置いておくのは余りにももったいない録音。しかし隠れたままなんでしょうね。




(参照ディスク)
ベートーヴェン:交響曲第1~9番、エグモント序曲、コリオラン序曲
クレツキ指揮 チェコフィル、同合唱団、ヴェングロール(S)、ブルマイスター(A)、リッツマン(T)、キューネ(B)
SUPRAPHON: SU3451-2012、SU3453-2012、SU3455-2012 (1964~68年録音)




http://blog.livedoor.jp/smj_ohkanda/archives/51489681.html