[Winny事件]裏表の判決
京都地裁の判決は3年近く前になります。そのときはこんなエントリ をしていたんですね。あれ?こんなこと書いてたっけ、という気もするわけですが。
さて、ネット系に親しんでいる人にとってはWinnyをやっている(た)かどうかにかかわらずきっと関心があったはずのこの事件。事実認定としてはほぼ地裁判決時と同じ。問題は幇助犯として処罰の対象となり得る事件であったのか、というところで、判決要旨から。
【資料】 ウィニー裁判・判決要旨(47NEWS)
(元記事はこちら)
(引用開始)
【ほう助の成否】
(1)ソフトについて検討
(Winnyの)匿名性機能は、通信の秘密を守る技術として必要にして重要な技術で、(中略)違法視されるべき技術ではない。
したがってファイル共有機能は、匿名性と送受信の効率化などを図る技術の中核であり、著作権侵害を助長するような態様で設計されたものではなく、 その技術は著作権侵害に特化したものではない。ウィニーは多様な情報交換の通信の秘密を保持しつつ、効率的に可能にする有用性があるとともに、著作権の侵害にも用い得るという価値中立のソフトである。
(2)ほう助が成立するか
ネット上のソフト提供で成立するほう助犯はこれまでにない新しい類型で、刑事罰を科するには慎重な検討を要する。
原判決は、ウィニーは価値中立的な技術であると認定した上で、ホームページ上に公開し不特定多数の者が入手できるようにしたことが認められるとして、ほう助犯が成立するとした。
しかし、2002年5月に公開されてから何度も改良を重ね、03年9月の本件に至るが、どの時点からどのバージョンの提供からほう助犯が成立するのか判然としない。
(中略)価値中立のソフトをネット上で提供することが正犯の実行行為を容易にさせるためにはソフトの提供者が違法行為をする人が出ることを認識しているだけでは足りず、それ以上にソフトを違法行為のみに使用させるように勧めて提供する場合にはほう助犯が成立する。(中略)
被告は価値中立のソフトであるウィニーをネットで公開した際、著作権侵害をする者が出る可能性は認識していたが、著作権侵害のみに提供したとは認められず、ほう助犯の成立は認められない。
【結論】
被告にはほう助犯の成立が認められないのに一審判決がほう助犯の成立を認めたのは刑法62条の解釈適用を誤ったもので、検察官の所論は理由を欠き、いれることはできない。よって被告は無罪とする。
(引用終わり)
結果的にこれらソフトによる著作権侵害等の犯罪行為が発生したからと言って、そのことの可能性を認識していたというだけでは幇助犯は成立しない(恐らく、幇助の構成用件を充足しないということではないかと推測されますが)、という判断で、結論として地裁と正反対(ただ、以前のエントリに示したとおり、地裁判決も微妙なバランスの上に成り立っていた感がありましたが)の判決となりました。
この件について出てくるのはやはり「包丁理論」とか、「そんならビル・ゲイツはなんで逮捕されんのじゃい」とかいう話だったりするわけですが、結構この高裁判決も微妙なところでバランスさせた印象がありますね。線の引き場所はそんなに遠いわけではないようです。
恐らく制作者的実務からして、この件で罪に問われること自体があり得ないことでしょうし、これがあってP2P技術で日本が大きく立ち後れたという有力な説もありますが、ともかく幇助罪に関する理論が表の部分ではっきりと争われて、またこうして裏表の判決、という結果が出たところには、こう言っては何ですが大変興味深いものを感じるのであります。
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